#525 米関税の逆風で慎重姿勢に転じる日銀-政策金利据え置きと成長率下方修正を読み解く

◆ 概要

日銀は4月30日~5月1日の金融政策決定会合で、政策金利無担保コール翌日物誘導目標0.50%程度)の据え置きを決める見通しです。同時に公表される「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」では、2025年度の実質GDP成長率中央値を1月時点の1.1%から0.6~0.7%へ引き下げる方向で調整中と報じられています。

 

◆ 成長率の下方修正ポイント

・ 1月レポート 1.1%(2025年度) → 新レポート案 0.6~0.7%

・ 下方修正幅 ▲0.4~▲0.5%ポイント

主因は(1)米国の10%相互関税による世界貿易縮小、(2)円高進行と輸出採算悪化、(3)国内消費の回復遅れ――の3点です。IMFも世界成長見通しを2.8%へ、わが国を0.6%へ引き下げており、日銀判断と整合的です。

 

政策金利を据え置く理由

1 外部ショックの不確実性

 米関税の影響が日本企業の輸出・設備投資にどの程度波及するかを見極める必要があります。植田総裁は「データを丁寧に点検する」と会見で強調しました。

 

2 コアCPIの鈍化リスク

 1月時点で2.4%だった2025年度コアCPI予想は2%近辺へ下方修正の公算。物価2%目標達成時期は「2025年度後半」から「2026年度」に後ろ倒しされるとの観測が強まっています。

 

◆ 市場の初期反応

・ 為替 ドル円は発表前に153円台で小幅円高。追加利上げ観測後退が背景。

・ 債券 10年国債利回りは0.89%→0.84%へ低下、イールドカーブはややフラット化。

・ 株式 TOPIXは輸出株中心に調整。内需ディフェンシブや高配当株が相対優位。

(※数値は4月26日終値ベース、独自集計)

 

◆ 投資家が注視すべき4つの論点

1 6~7月追加利上げの有無

 下方修正が想定より小幅なら「0.75%への小幅利上げ」が議論再燃の余地。

 

2 米関税の持続性

 90日猶予後に関税が本格発動されるかが最大の外部リスク。

 

3 賃金のモメンタム

 春闘賃上げ率は前年比+3.7%と高水準だが、輸出採算悪化が企業収益を圧迫すると来年は減速が見込まれる。

 

4 国債買い入れの減額計画

 6月中間評価での減額ペース次第で長期金利の上限が再び意識される可能性。

 

ポートフォリオ戦略のヒント

デュレーションは中立~長め:短期の利上げは遠のき、JGBのキャリーが安定的。

・ 為替ヘッジ付き外債の妙味:円高余地を残す局面でヘッジコストが相対的に低下。

内需ディフェンシブ株:調剤薬局、食品、通信など価格転嫁力が強いセクターを選好。

金利上昇耐性のある高配当株:金融株(メガバンク)は利ざや拡大余地を織り込み済みで、足元は調整局面入り。配当利回り4%超えの総合商社・電力に分散。

 

◆ 今後のスケジュール

5月 1日 展望レポート公表・植田総裁会見

6月 14日 国債買い入れ減額計画の中間評価

7月 30~31日 次回金融政策決定会合

 

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【まとめ】

今回の据え置きと成長率下方修正は、外部ショックを警戒する慎重さの表れです。利上げ路線からの「軌道修正」というより「小休止」の色彩が濃く、金利上昇ペースは緩むものの、インフレ見通し次第で年内0.75%までの追加利上げシナリオは残存します。投資家は為替と債券市場のボラティリティに目配りしながら、内需ディフェンシブと高配当銘柄でポートフォリオのクッションを確保しておく戦略が有効と言えそうです。

 

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本記事は情報提供を目的としており、特定の投資行動を勧誘・推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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