銀価格の50年の推移
銀は、貴金属としての価値に加えて、産業用途(電子機器、太陽光発電、医療機器など)にも幅広く活用されているため、金やプラチナとは異なる価格変動要因が存在します。過去50年間の銀価格は、需給関係、経済危機、インフレ懸念などに大きく影響されてきました。
• 1970年代の価格上昇:1970年代はインフレが高まったことで、投資家が金や銀などの貴金属に資金を移したため、銀価格も大きく上昇しました。
• 1980年のシルバースクイーズ:1980年には、著名な投資家であるハント兄弟が銀の市場を買い占めようとしたことで、銀価格は一時50ドル近くにまで急騰しました。この事件は「シルバースクイーズ」として知られ、その後の価格暴落も激しく、1982年には10ドルを切るほどまで価格が下がりました。
• 1990年の動向:1990年の銀価格は、前年からの下落傾向を受けて、1オンスあたり約4~5ドルの範囲で推移しました。この時期は、湾岸戦争の影響で金の価格が一時的に上昇した一方、銀は産業用需要が中心であったため、同様の上昇を見せませんでした。また、景気後退により産業用需要が減少したことが、銀の価格を押し下げた要因でもあります。
• 2000年代からの価格回復:2000年代に入ると、太陽光発電(ソーラーパネル)や電子機器の需要増加により、銀の需要が高まりました。さらに、2008年のリーマン・ショック後の量的緩和(QE)の影響で、投資資金が貴金属市場に流入し、銀価格は急騰しました。
• 2011年の高騰:2011年には、インフレへの懸念が高まったことで、銀価格は一時1オンスあたり50ドル近くまで急上昇しました。しかし、その後の利上げ見通しや投機的な資金流出により価格は下落しました。
• 現在の動向:2020年の新型コロナウイルスのパンデミックによる世界的な不確実性と金融緩和政策により、銀価格は再び高騰しました。現在は、インフレ対策資産としての側面と、再生可能エネルギー政策の推進による太陽光発電の需要が価格を押し上げる要因となっています。
1990年の銀価格の動向
1990年の銀価格は、産業用需要の減少と、湾岸戦争の影響による地政学リスクの中で、金ほど大きな上昇を見せませんでした。湾岸戦争は、金のような「安全資産」に対する需要を増やしましたが、銀は主に産業用の需要が強いため、同様の動きは見られませんでした。
また、1990年代初期は、世界的な経済成長がやや鈍化し、産業の需要が停滞したことも価格の上昇を抑える要因でした。このため、銀の価格は1オンスあたり約4~5ドルの水準で安定的に推移しました。
銀ETF商品の紹介
銀への投資手段として、銀ETF(上場投資信託)が人気を集めています。銀ETFは、銀価格に連動する投資信託で、金やプラチナETFと同様に株式市場で手軽に売買できます。物理的な銀を購入する必要がないため、保管コストもかからず、投資家にとって利便性の高い商品です。
代表的な銀ETF
• iShares Silver Trust (SLV):世界で最も取引量が多い銀ETFで、物理的な銀の現物を保有し、価格に連動する投資成果を提供します。
• Aberdeen Standard Physical Silver Shares ETF (SIVR):SLVと同様、銀の現物を保有するETFで、経費率が比較的低いのが特徴です。
• ProShares Ultra Silver (AGQ):銀価格の2倍の変動を目指すレバレッジ型のETFです。短期のトレード目的の投資家に利用されることが多いです。
日本市場の銀ETF
• WisdomTree 銀上場投資信託 (1673):東京証券取引所に上場しており、円建てで銀価格に連動する投資成果を提供します。
• 純銀上場信託:日本の市場で取引される銀ETFで、投資家が手軽に銀の価格変動を享受するための手段です。
銀ETFのメリットとデメリット
• メリット
• 物理的な銀を保有する必要がなく、管理コストがかからない
• 銀の市場価格に直接連動するため、価格変動の利益を得やすい
• 少額からの投資が可能で、資産の分散投資にも役立つ
• デメリット
• 銀価格の変動リスクが高い(ボラティリティが大きい)
• 経費率(管理手数料)がかかる
• 銀自体は配当や利息を生まないため、価格変動による利益が中心となる
まとめ
過去50年の銀価格は、産業用需要の変化、経済情勢の不安定化、金融危機、そして投機的な動きに大きな影響を受けながら推移してきました。特に、1980年の「シルバースクイーズ」や2011年の価格高騰は、銀市場のボラティリティの高さを示す象徴的な出来事です。
1990年の銀価格は、湾岸戦争や景気の減速が影響し、産業需要の低下から価格は安定的な水準にとどまりました。
銀ETFは、物理的な銀を保有する手間をかけず、手軽に銀価格の変動を享受できる投資手段です。iShares Silver Trust(SLV)やWisdomTree銀ETFなどが代表的な商品です。銀価格はボラティリティが高いため、慎重な投資戦略が求められますが、資産の分散投資の一環としても注目されています。
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