エムポックス(旧称:サル痘)は、エムポックスウイルス(モンキーポックスウイルス)によって引き起こされる急性発疹性疾患です。このウイルスは、ポックスウイルス科オルソポックスウイルス属に属し、天然痘ウイルスと同じグループに分類されます。
症状と経過
エムポックスの潜伏期間は通常7~14日で、最短5日、最長で21日とされています。初期症状として、発熱、頭痛、筋肉痛、リンパ節の腫れ、倦怠感などが見られます。これらの症状が1~5日続いた後、発疹が出現します。発疹は顔面、手足、口腔内、陰部、眼(角膜や結膜)などに現れ、水疱や膿疱を経て痂皮(かさぶた)となり、最終的には剥がれ落ちます。多くの場合、2~4週間で自然に回復しますが、免疫力が低下している人や小児では重症化することがあります。
感染経路
エムポックスは、感染した人や動物との密接な接触によって伝播します。具体的には、皮膚の病変や体液、血液に触れること、性的接触、患者との長時間の対面による飛沫感染、患者が使用した寝具や衣類などの汚染物質との接触が挙げられます。2022年以降の流行では、男性間での性的接触が主な感染経路とされていますが、女性や子供の感染例も報告されています。
診断と治療
診断は、PCR検査によるウイルスDNAの検出で行われます。現在、日本国内でエムポックスに対する特異的な治療薬は承認されておらず、症状に応じた対症療法が中心となります。海外では、テコビリマットという抗ウイルス薬が承認されており、日本でも臨床研究が進められています。
予防策
エムポックスの予防には、感染者との密接な接触を避けることが重要です。特に、不特定多数との性的接触や、原因不明の発疹がある人との接触は控えるべきです。また、天然痘ワクチンがエムポックスの発症予防や重症化予防に有効とされています。日本では、エムポックスは感染症法上の四類感染症に指定されており、医師は診断後、直ちに最寄りの保健所に届け出る義務があります。
国内の状況
日本国内では、2022年7月に初めての感染者が確認され、その後も散発的な報告が続いています。2024年8月には、世界保健機関(WHO)がコンゴ民主共和国でのエムポックスの急増を受けて「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)を宣言しました。日本国内でも引き続き注意が必要です。
まとめ
エムポックスは、エムポックスウイルスによる急性発疹性疾患で、主に密接な接触を通じて感染します。症状は多くの場合自然に回復しますが、重症化するリスクもあるため、適切な予防策と早期の医療機関受診が重要です。
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