#678 タイで注目の“日本ブランド”:現地で見たビジネスの可能性――ユニクロ・無印良品・ドンキの強みと投資視点――

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(はじめに)

バンコクの商業施設を歩くと、日本発チェーンがごく自然に生活圏へ溶け込んでいる。とりわけ衣料のユニクロ、生活雑貨の無印良品、そしてディスカウントのドン・ドン・ドンキ(以下ドンキ)は、東南アジア戦略の“実験場”ともいえるタイ市場で独自の成長曲線を描いてきた。本稿では現地視察で得た定性的な気づきに、公開データを掛け合わせ、日本企業が学ぶべき成功要因と投資妙味を整理する。

1 タイで存在感を増す3大日系チェーン

1―1 ユニクロ:71店舗体制で国内アパレルの中核へ

 2025年4月末時点の店舗数は71。タイ法人単体売上は2023年実績で1,580億バーツ(約6,500億円)と地場大手のセントラル系アパレルに匹敵する規模に膨らんだ。さらに同年上期(2025年2月期)もSoutheast Asia & Oceania部門が二桁増収・増益を続け、グローバル全社の収益牽引役となっている。

1―2 無印良品:38店舗、旗艦「MUJI One Bangkok」で体験拡充

 無印良品はバンコク中心部に延床3,040㎡の大型旗艦「MUJI One Bangkok」を23年10月に開業。国内店舗数は38に達し、この3年で14店を新設した。大型改装したサイアムディスカバリー店(1,300㎡)ではリフィルステーションやカフェ強化など“滞在型”サービスを導入し、平均客単価を2割押し上げたという。

1―3 ドンキ:コスト高で一部撤退も7店舗を堅持

 24時間営業と日本産生鮮の品揃えで知られるドンキは、コスト上昇を背景に2025年5月バンカピ店を閉店。国内ネットワークは9店から7店へ縮小したが、売上シェアは観光特需の戻りで横ばいを維持している。価格競争力確保とテナント賃料の最適化が急務となっている。

2 成功ブランドの共通点

・ローカライズ×定番のバランス:ユニクロはエアリズムやUVカット素材など熱帯向け商品比率を35%へ引き上げ、無印はタイ産ハーブ茶・竹製雑貨を投入。ドンキはタイ語・英語併記POPで“日本産=高い”イメージを打ち消す工夫。

・価格帯ミックス:3社ともローカル低価格帯とインバウンド富裕層向けを一店舗で両立。単価1,000バーツ以下の“日常消費”棚と、土産需要のプレミアム棚を明確にゾーニングすることで購買機会を最大化。

・体験型ストア:試着室の冷房強化(ユニクロ)、リフィルステーションでSNS拡散(無印)、寿司カウンターとライブ厨房(ドンキ)など“体験”が来店動機に直結。

3 店舗・商品戦略の工夫

ユニクロは郊外型「Uniqlo Roadside」を導入し、自動車社会のタイで家族来店を拡大。無印は旗艦・中型・出張販売ワゴンの3フォーマットを併用し、地方モール出店リスクを低減。ドンキは都心24時間型と郊外ミニ業態で営業時間・SKUを最適化。

4 投資家目線で見る伸びしろ

・ファーストリテイリング:国際部門(主にASEAN・インド・豪州)が営業利益率16%台へ改善し、円安メリットも享受。中期で株主還元強化余地あり。

・良品計画:東南アジア売上は400億円規模へ拡大、北米を初めて上回った。ローカル生産の比率を高め、為替リスク吸収力が向上。

・PPIH(ドンキ):国内インバウンドが想定超で本社収益は過去最高ペース。ただしタイ事業は粗利率20%台前半に低下、光熱費2割増が響く。コスト転嫁策次第では現地撤退リスクも意識。

5 まとめ――アジア戦略から学ぶ3つのポイント

1)ローカライズと日本品質のハイブリッドが競争優位を生む

2)価格帯を多層化し、「日常需要」と「観光需要」を同時取り込み

3)店舗体験を磨き、SNS拡散とオンライン販売へ誘導

東南アジアの中でも可処分所得の伸びが相対的に高いタイ市場は、日本ブランドの実験を許容する土壌が整っている。視察時には旗艦店だけでなく、郊外型やミニ業態の売場オペレーションを比較し、優れたKPI(客単価・回転率・坪効率)を持ち帰ることで、日本国内事業や他ASEAN国展開のヒントになるはずだ。

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