#571 コンチネンタル FY2024決算レビュー:マージン改善と自動車部門スピンオフで再成長に布石

1.サマリー

独コンチネンタル(以下、同社)の2024年(会計年度は暦年)の業績は、売上が前年比4.1%減の3,970億ユーロとトップラインが縮小した一方、コスト削減と製品構成の改善により調整後EBITは66%増の27億ユーロへ伸長し、調整後EBITマージンは6.8%(前年6.1%)へ上昇した。純利益は12億ユーロで微増にとどまったが、厳しい需要環境下で収益性を高めた点が評価できる。

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2.主要財務指標

・売上高:3,970億ユーロ(前年比▲4.1%)

・調整後EBIT:27億ユーロ(+6.6%)

・調整後EBITマージン:6.8%(+0.7pt)

・純利益:12億ユーロ(+1.0%)

・調整後フリーキャッシュフロー:10.5億ユーロ(▲18.6%)

・一株当たり配当提案:2.50ユーロ(前年2.20ユーロ)

 

3.セグメント別動向

自動車(Automotive):売上194億ユーロ(▲4.3%)、マージン2.3%。コスト構造見直しが寄与し黒字幅を拡大。

タイヤ(Tires):売上139億ユーロ(▲0.7%)、マージン13.7%。プレミアム乗用車タイヤと欧州冬タイヤ需要が採算を押し上げた。

コンチテック(ContiTech):売上64億ユーロ(▲6.7%)、マージン6.2%。自動車・産業向け需要低迷が響くが第4四半期に持ち直し。

 

4.キャッシュフローと財務健全性

営業キャッシュ創出力は堅調だが、リストラ費用の一括計上とコンチテック株の再取得の反動でフリーキャッシュフローは減少。自己資本比率は34%前後を維持し、格付機関による投資適格評価を確保している。CAPEXは売上の5.5%程度と前年並みで、タイの乗用車タイヤ増産(投資額3億ユーロ強)が主案件。

 

5.戦略トピックと見通し

・自動車部門スピンオフ:経営陣は2025年夏の資本市場デーで詳細を公表予定。同部門を独立上場させ、残存部門(タイヤ+コンチテック)との資本効率を最適化し価値解放(バリューアンロック)を図る。

・2025年ガイダンス:連結売上380〜410億ユーロ、調整後EBITマージン6.5〜7.5%を想定。部門別ではタイヤ13.5〜14.5%の高採算維持、自動車は2.5〜4.0%へやや改善を織り込む。

・トランプ政権による自動車関税:CFOオラフ・シックは「追加関税は吸収できない」と述べ、北米・欧州を中心にサプライチェーンローカライズを加速する考えを示した。

 

6.投資視点

① マージン改善トレンド:タイヤ事業の高利益率が全社の損益底上げを継続。自動車部門の黒字化が進めばマルチプル拡大余地。

② スピンオフ効果:コングロマリットディスカウント解消が期待され、各事業の資本コスト低減や戦略的提携を促進する可能性。

③ リスク:世界自動車生産は25年±1%と低成長見通し。トランプ関税やEV移行の進捗遅れが北米売上・コスト構造に影響。

④ バリュエーションの考え方:24年実績ベースでEV/EBITDAは約6倍(同業平均7〜8倍)。タイヤ主導の安定収益+再編シナリオを鑑みるとディスカウント幅はやや大きい。ガイダンス達成とスピンオフ進展を見極めた中期投資が妥当。

 

7.まとめ

2024年は売上縮小ながらコスト改革によって利益体質を引き上げ、25年に向けた再成長シナリオを浮き彫りにした年だった。タイヤ事業の堅調さ、コンチテックの産業向けテコ入れ、自動車部門の独立化という三位一体の戦略により、同社は資本効率の高いモビリティ・マテリアル企業へ変貌を図る。関税リスクが不透明要因であるものの、中期的な利益拡大と企業価値向上への布石は着実に打たれつつある。

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